こんにちは!東京都台東区を中心に、皆さまのお口の健康をサポートしている秋葉原総合歯科クリニック 院長の野村です。これまで数回にわたって入れ歯(義歯・デンチャー)についてお話してきましたが、今回は入れ歯の正しいお手入れの仕方や注意事項についてお話させていただきます。
様々な事情で歯を失ってしまった方にとって、入れ歯はその機能を回復させる素晴らしい道具(ツール)となりますが、きちんとお手入れをしないと壊れてしまったりお口や身体に悪影響を与えてしまうことすらあります。
以下の点をしっかりお守りいただき、できるだけ長く大切にお使いいただければと思っています。
もし入れ歯のお手入れを怠ると・・・
入れ歯も自分の歯と同じで、毎日の清掃とメンテナンスが必要です。毎日お口の中に入れて食事もするので、装着していると食事の食べかすや雑菌が付着します。つまり、これらの汚れをしっかりと除去し、清潔に保つ必要があるのです。もしこれらを数日間怠ると、入れ歯は大変不衛生な状態となり、雑菌が大繁殖して臭いを発したりカビが生えてきてしまいます。
また、入れ歯は大変デリケートなので、きちんと正しい方法でメンテナンスしたり扱わないと変形や破損につながります。入れ歯を作る際は、歯科医師や歯科技工士が患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせて緻密に調整しているため、変形や破損が生じてしまうと咀嚼や噛み合わせなど機能面に重大な影響を与えてしまいます。
入れ歯の正しいお手入れ方法と注意点
①食後や就寝前にはしっかりと洗ってください
口腔内には元々多くの細菌が存在しており、食べ物のカスや糖分などを養分にして繁殖します。当然入れ歯を使用していると汚れや細菌が付着しますので、それらを取り除く必要があります。
食後や就寝前には入れ歯をはずしてしっかりとお手入れをしましょう。なお洗い方に関しては、水道の水を流し、義歯専用の歯ブラシ、もしくは普段使っている歯ブラシを使って洗浄するようにしましょう。
②入れ歯に合った洗浄剤や歯磨剤を使ってください
これまで説明してきた通り、入れ歯には色々な種類のものがあり素材もばらばらです。材質によって利用できない洗浄剤もあるので、歯科医師に確認して入れ歯の材質に合った義歯洗浄剤をご利用ください。
また、天然歯用の歯磨き粉の中には「研磨材」が入っているものがあります。これらで強く磨いてしまうと入れ歯の表面に細かい傷がつき細菌や汚れが入り込みます。そうなると入れ歯に臭いや着色が生じたり、破損等の原因になるのでご注意ください。
③熱湯で洗わないでください
入れ歯で使用されているプラスチック部分は高温に弱く、熱が加わると変形や劣化につながります。熱湯消毒という意味合いで熱いお湯を入れ歯にかけたり漬けてしまう方がたまにいらっしゃいますが、絶対におやめください。
④入れ歯は乾燥させないようにご注意ください
入れ歯の材料のプラスチックは、元々お口の中に装着することを前提として作られているので、適度な水分(湿気)が必要となります。水分が抜けて乾燥してしまうと、入れ歯が割れたり変形することがあるので、洗浄した後は水道水もしくは義歯洗浄剤につけて保管するようにしてくだださい。
⑤強い衝撃や力を加えないようにご注意ください
入れ歯は落とすなどの強い衝撃を与えると割れることがあるので丁寧に取り扱ってください。また、あまり強く噛み込みすぎると破損や変形につながることがあるので十分お気をつけください。ちなみに、入れ歯を洗う際に洗面器やそれに代わる容器に水を張った上で洗うと、もし落としたとしても破損することがないので安心です。
⑥漂白剤につけることも禁止です
入れ歯を漂白剤につけてしまうと変色や変形の原因になります。漂白剤を使って除菌する方をたまにお見受けしますが、入れ歯を傷めてしまうのでおやめください。
その他入れ歯を使用されている方へのお願い
①入れ歯だけでなくご自身のお口も清潔に保ちましょう
どんなに入れ歯を清潔にお手入れしたとしても、入れ歯を使用する方のお口が汚れていては意味がありません。ご自身のお口のケアと入れ歯のケアの両方をしっかりとおこないましょう。
②合わなくなったり痛みがでたらすぐに歯科医院に行きましょう
もし入れ歯が合わなくなったり痛みが出てきたら、すぐにかかりつけの歯科医院を受診してチェックしてもらうようにしましょう。入れ歯は一度作ったらずっと持つわけではなく、経年劣化していきます。またお口の状態も加齢により少しずつ変化してくるので、定期的に歯科医院で診てもらうことをお勧めします。ちなみに、入れ歯を10年20年とかなりの長期間使用される方がいますが、こちらもおすすめできません。衛生的な問題もありますし、摩耗や口腔内の変化により合わなくなっている可能性が高いので、定期的的に歯科医院を受診して、清潔で自分のお口に合った入れ歯を使うようにしましょう。
③紛失にご注意ください
自分の歯の代わりとなる入れ歯を紛失してしまうと、毎日のお食事や会話に大きな支障をきたします。「ティッシュに入れ歯を包んで保管していたらうっかりそのまま捨ててしまった」「どこに入れ歯を置いたかわからなくなってしまった」など実際にあり得ますので、置く場所を決めたり入れ歯専用のケースを使用するなど無くさないように十分注意しましょう。また、保険の入れ歯は一度作るとルール上半年間は作れないのでご注意ください。
④枕元などすぐ持ち出せるところに置きましょう
夜中の地震や局地的豪雨などの自然災害などが起こった際など、緊急で避難せざるを得ない場合があります。避難先で入れ歯がないと生活が著しく不便になるので、すぐに持ち出せるような場所で保管すると安心です。
⑤就寝中の入れ歯の着用について
基本就寝時は入れ歯を外していただくことをおすすめします。なぜなら、入れ歯に付いた細菌が原因で誤嚥性肺炎を起こしてしまったり、装着し続けることで周囲の天然歯、歯茎、骨などに負担をかけ続けてしまうからです。ただし、入れ歯がないことで顎や残存歯に過剰な負荷がかかり、破折などのリスクがある場合は例外となります。患者さんのお口の状態ごとに対応が異なりますので、かかりつけの歯科医師にご相談の上指示にしたがってください。